(日本語/Japanese)
.
(タイトル画面「平沢進の亜種音TV 非コード人のアコード《Accord of the Uncoded》+タオの3つのエコー《Three Echoes of the Dao》」の文字が映る。)
.
[00:22]
平沢進:みなさん、ごきげんよう。平沢進でございます。平沢進のBack Space Passは今回から、「亜種音TV」と改名されました。それで、先ずは、新規のご贔屓衆の為に、「Back Space Pass改め”亜種音TV”」とは何なのかを簡単にご説明致します。
亜種音TVは私が行った何らかの大き目のイベント、例えばレコーディングとかライブとか、或いはコンサートツアー等の終了後に放送されるストリーミング放送です。
放送では、イベントに纏わる様々なエピソードや考え方、そして時間に余裕が有れば、質問に答えるという事が盛り込まれた番組であります。
基本的にはライブ放送でありますが、終了後にはオンデマンド動画として保存されているので、いつでも見る事ができます。
見逃した人もどうぞご安心ください。
[01:31]
という事で、今回は「亜種音TV"非コード人のアコード”+(プラス) "タオの3つのエコー東京"編」という事で、始めたいと思います。
[01:41]
しかし、その前に、一つお話ししておきたい事がございます。実は、今回の放送はライブ放送ではなく、収録されたものを放送しております。
と言いますのも、今日までの間に、今月はインプラントの手術が二回有りまして、その影響で発音が変わってしまったり、或いは、顔面のどこかが腫れて見苦しくなったりする可能性が無きにしも有らずで、ちょっと予想がつかない為に、全ての手術前に収録した録画を本日配信しているという方法にさせて頂きました。何卒、ご了承ください。
[02:26]
収録ではあるものの、基本的にはライブ感を出す為に無編集なので、お見苦しい点、或いはお聞き苦しい点が或るかと思いますが、重ねてご容赦ください。
[02:41]
それでは「非コード人のアコード(Accord of the Uncoded)」から、参りましょう。
「非コード人のアコード」は2025年12月から2026年1月と、年を跨いで行われました、大阪、東京で開催されたライブ・コンサートでありまして、核P-MODELの新譜「unZIP」の発売に連動して開催されたものであります。
[03:09]
ライブのメンバーとしては、いつもの通り会人(えじん)がサポートとして入っておりますが、会人がサポートとして入るのは実は平沢ソロ、あるいはHybrid Phononという形式の時なのですが、今回からは、核P-MODELのライブにも会人がサポートとして参加していく、という事になっております。
.
[注: 平沢進はEjin達が核P-Modelのサポートメンバーとして演奏するのは今回(2025-2026)が初めてだと言っているが、これは彼の記憶違いで、実際は、Ejin達は2018年のコンサート「回 = 回」の時から、核P-Modelをサポートしている。]
.
[03:34]
それには意味が有りまして、unZIPを境に、核P-MODELはP-MODELブランドとしての役割を終えるのではないかと予測されておりまして、今後は核P-MODELブランドはソロに接近しつつ、最終的には融合する可能性があるという、途中経過として、そろそろ会人もじわじわ参加し始めるというような形態になっております。
[04:11]
そして今回のライブの選曲についてちょっとお話ししたいと思いますが、「核P-MODELのライブであるにも関わらず、核P-MODELの曲が少ないではないか?!」というお叱りの声を耳にしております。ご尤もでございまして、実はこれには訳(わけ)があります。
核P-MODELの最新アルバム「unZIP」というアルバムの内容と関係していますが、「unZIP」では、1stアルバム「In A Model Room」の中で、「”Room”の中に幽閉されていた人々が幽閉を解かれ、つまり圧縮を解かれunzipされて解放されていくsha という事を表している訳(わけ)です。
つまり、その人自身ではなく、他者が定義した社会的人格とか、あるいは不本意でありながら、それを自分だと信じてるような人格から解放されて本来の自分へと向かって行くという流れの中にアルバムが位置づけられているという訳(わけ)であります。
[05:32]
そう考えますと、P-MODELのデビューアルバムから、核P-MODELに至るまでの体質というものがどちらかというと、よりネガティブなものが多い訳(わけ)で、つまりディストピアがテーマになっていたりとか、警告的な表現や、人々はどんな風に抑圧されているのかとか、また、誰がそんな事をしているのかというようなものを表現する流れがP-MODELブランドでありました。
そしてunZIPではある意味、人類史の分岐点を解放或いは解毒方面へと跨ぐような展望からアルバムが作られています。unZIPが肯定的な質感である一方で、それ以前のP-MODELブランドの質感というのは、暗く、ネガティブで批評的で、抵抗的で、そんな質感を持っている訳(わけ)で、unZIPの質感と整合性が取り難(にく)い訳(わけ)です。
[06:45]
そうなると、一つのライブをやる為の選曲というものはunZIP以前の曲という範囲の中で、核P-MODELのものはほぼ落第な訳(わけ)です。そこで、そのコンセプトを重視する選択肢に於いて、過去のデビューアルバムから直前の核P-MODELのアルバムに至る、P-MODELの中から、よりunZIPの視線に近い、あるいは肯定的な視点を持つ曲を集めるという作業をする必要がありました。
[07:26]
その結果あのような選曲になった次第であります。そうする中でですね、結果的に非常に久しぶりな楽曲がリストアップされる結果となりました。
[07:42]
その事についてちょっとお話ししておきたいと思いますが、30年以上振りに演奏された曲目が幾つか混じっているという事が、興味深い結果になっております。
[07:57]
例えばGRIDですね。あまり信用できないのですが、AIによる調査結果ですとGRIDはなんと34年ぶりだそうです。
[08:13]
AIはしばしば堂々と嘘をつくので、気を付けなければいけませんけれども、自分で調べる手間を省くという意味で、ここは嘘が混じる可能性を承知の上でAIの調査を取り入れて他(た)の曲も検証してみますが、それによれば、Clusterは32年ぶり、そしてJulia Birdに至っては35年ぶりだそうです。
[08:44]
その他(ほか)、Another DayやSolid Airという古い曲もございますけれども、ソロのライブのほうでそれを選曲した事も有りますし、過去に還弦主義といってP-MODELの楽曲をソロ的な弦アレンジを施すというプロジェクトが有りましたが、その中でAnother Day等(など)も取り上げられた事が有り、まあ、それを無視すれば、P-MODELとしては34年ぶりだそうであります。
[09:17]
何か古い曲自慢の様になっていますけれども、そもそも私は作品数が多くてですね、著作権が登録されている曲だけでも20年以上前の調べでは、300曲を超えているようです。これは勿論、CMの為に作られた曲や劇伴等(など)も混じっていますが、これら全ての曲を1年に1曲だけ1回演奏する機会が有ったとして、2度目に演奏するのは300年後という壮大な話になりまして、30数年ぶり等(など)と言うのはですね、可愛らしいもんであります、という所でしょうか。
[10:07]
しかし一体全体私はどれだけ働いたんだ、と思うとゾッとしますが、お陰様で未(いま)だ想像力は枯渇せず、常に新作をメインに活動できているのも皆様の応援があればこそと申し上げておきたいと思います。
[10:35]
選曲については、以上の様な特徴がございました。
[10:43]
そして”非コード人のアコード(The Accord of the Uncoded)"はライブとして幾つかの新しい試みがございます。一つは新しいレーザーハープの導入。そしてもう一つはモジュラーシンセとギターシンセサイザーのソロの導入というのが一つのハイライトとして有ったと思います。
[11:08]
その内、新しいレーザーハープについて先ずお話ししたいのですが、これは明和電機製のレーザーハープでありまして、明和電機の社長様であるところの土佐(土佐信道)k様が自ら「輝鈴(キリン)」と命名して下さいました。
[11:28]
明和電機の土佐さんとは、雑誌「FILTER」で行(おこな)った対談が初対面ですが、実は印象から言って、世間のイメージから言って、「二人はもっと前に知り合ってるんじゃないか」と錯覚される様な関係なんですけれども、実はP^MODELが「舟」とかその辺のアルバムを出した時のコンサート・ツアーで、地方のライブハウスの楽屋に明和電機さんがP-MODELに向けてメッセージを残してくれた事が有りました。それが最初の接触と言えば言えなくもないのですが、実際に物理世界で面会してお話しさせて頂くのは、その「FILTER」の対談が初めてでありました。
[12:18]
その時に明和電機製の製品がずらりと展示された某所で対談が行われたのですが、その雰囲気たるや非常に奇妙で美しく、時代背景が釈然としないレトロフューチャー的な美しい製品に囲まれながら、お互いの「奏でる奇妙なマシン」についての思いを確認し合うというような場を設けて頂く事ができた訳です。
[12:53]
その対談の中で「もしかしたら明和電機さんにレーザーハープを作ってもらう事はできないだろうか?」という考えが頭をよぎりまして、しかし、その時はぐっと堪(こら)えて、口には出さなかったのですが、後(のち)に恐る恐るメールで打診した訳です。「新しいレーザーハープを作って頂けませんか?」と。「明和電機製品のような美しい意匠と、それから、その奇妙なコンセプトに魅了されましたので、是非ともその路線で新しいレーザーハープを作っていただきたいのですが...」と打診した結果、なんと快く了承して頂きまして、それから数回の打ち合わせを経て、数か月後には「輝鈴(キリン)」という名を掲げて完成して参りました。
[13:54]
で、今回の”非コード人のアコード(The Accord of the Uncoded)"が(新しいレーザーハープ輝鈴の)初ステージだったのですが、その時は未だ、それまで使っていた先代のレーザーハープの使い方と同じ使い方で、演奏されるデータは同じものを流用するという方法を採っていました。
[14:19]
輝鈴というレーザーハープには、実は、先代のレーザーハープには無い機能がございます。この機能については、夏のフジロックで披露しようと計画しているのですが、簡単にちらっと説明しておきましょうか。簡単に言うと、レーザー光線が動きます。現在のレーザーハープのレーザーの使い方としては、光線を遮る事によって演奏データがトリガーされて音が出るようになっています。つまり、遮ると命令が発射される、と。で、輝鈴にはですね、逆に演奏データを入力するとレーザーが動くという機能が備わっています。つまり輝鈴は演奏データを出力したり入力したりしながらレーザー光線を動かしたり、光線そのものを動かしたり、音を奏でたり、というような機能が備わっています。
[15:32]
これはちょっとしたショーアップに使えるという、新しい視覚的なパフォーマンスに繋がる、素晴らしい機能ですので、フジロックには、どうぞご期待ください。
[15:44]
そして、レーザーハープの話はこの辺にしまして、もう一つのハイライトとして、モジュラーシンセサイザーを使用しました。”非コード人のアコード(The Accord of the Uncoded)"をご覧になった方(かた)は分かると思うのですが、私がモジュラーシンセを操作するシーンをカメラで撮影して、大きなスクリーンに映写されていましたので、それ(モジュラーシンセ)がどんな姿をしているかというのはお分かりと思います。
[16:19]
普通シンセサイザーというのは、それぞれの機能が内部的に配線されていて、一つの完成されたシステムとして出来上がっている物を演奏するという形式になっているのですが、モジュラーシンセというのは、シンセサイザー黎明期の姿を、まだ実験的に作り始めた時の姿を継承して、つまり各々(おのおの)の機能別のモジュールがただ並べられていて、それを外部的に配線して繋げていきながら音を作っていくという、あるいは演奏に変化を加えていく、という様な事をする形式のシンセサイザーです。
[17:10]
実際、技術の進歩という意味では、既に淘汰されていても良い筈の物なんですが、その姿、或いはマン・マシン的な相互関係のロマンというか、そいういうものの強い支持者達によっていまだに生き残っています。
[17:34]
と言いながら、既に、シンセサイザーという物は、非常にその頃から進化しておりまして、物理的な固体のシンセサイザーから、更に、もう私が現在使っているようなソフトウェアのシンセサイザーとして、配線も要らない、場所も取らないというような、概念的な仮想シンセサイザーという形にまで進化している中で、例えばビンテージ・カーに魅了される人々がいるように、或いは古い家具に価値を見出す人がいるように、モジュラーシンセという物にもそれに近い視線が向けられる事が有ります。
[18:24]
それは楽器という洗練以上の、奏でる機械という、よりマン・マシン的な相互関係を生むようなロマンというか、そういう物語性が投影される性質を持っています。非常に不便な道具なのではありますが、それ故に出て来る音というもの一の傾向というものが有ります。現代的なシンセサイザーを幾つも並べてそれを連携させていくことから出来上がってくるものとはまた違うニュアンスの特徴を持った音が生じるようになっています。
[19:09]
そして、その操作性の悪さ故に即座に何かを変更することができないもどかしさというものも含めて、音の傾向、或いは音像の奥行きとして表現されることを目指すミュージシャン等(など)もいます。
[19:29]
この度私がなぜモジュラーシンセを導入したかといいますと、既に私は物理シンセサイザーをどんどん超えて、削ぎ落して、最終的に何も無い概念上のソフトウェア・シンセサイザーだけを使うようになった現在、「FILTER」の対談で、小西健司(こにしけんじ)と福間創(ふくまはじめ)と私の三人が対談した時に、小西健司と福間創はモジュラーシンセを使うミュージシャンでありまして、先程お話ししたように、よりマン・マシン的な相互関係、より不便な機械の調整などを強いられる世界から音を作り出すというようなことをしている人達で、話しているうちに、「そうだ、そういえば、私自身もそうだった」ということで、もう一度モジュラーシンセを導入して、できれば小西健司と福間創と三人でライブをやってみたいという衝動が俄かに生じたのでありました。
[20:44]
それで対談の後、三人で色々話すうちに、「私はモジュラーシンセを導入するので何か(共同のプロジェクトを)考えましょう」という事を打ち合わせていたのですが、残念ながらご存知の通り福間創(ふくまはじめ)が他界してしまったという事で、それは実現しておりません。
[21:07]
ですが、まだ、小西健司(こにしけんじ)と何かが出来るという可能性と希望を捨てた訳ではございません。
[21:19]
そして私が使っているモジュラーシンセは、Erica SynthsというブランドのBlack Systemという物でありまして、普通モジュラーシンセというのはその性質から、それぞれのモジュールを自分の好みに合わせて、例えば、「この機能のモジュールはドイツ製、この機能のモジュールはロシア製、ここは日本製、ここはカリフォルニア製、或いは反対側海岸(東海岸)製」みたいな、自分でその用途と好みに応じて組み上げていくのが一つの醍醐味であるのですけれども、私の場合はそれらを研究し選別し選択肢として取り入れながら自分のシステムを構築していくという時間が無かったものですから、予めBlack Systemという、どちらかというとライブ向けな操作系を配置したモジュールの組み合わせられた、既に組み合わせられたシステムを購入しました。
[22:26]
これを時間の無い中、色々といじっている内に、「それではそろそろライブで使ってみようか」という事になり、先日使用した訳であります。
[22:39]
そして、もう一つ、シンセサイザー絡みで、ギターシンセサイザーのソロが行われました。モジュラーシンセのソロを受け継ぐように、その次のパートとして、ギターシンセサイザーのソロを試みました。だいぶ古いP-MODELの時代から、私はギターシンセサイザーを何種類か使っています。ギターシンセサイザーというのは非常に難しい機械でありまして、勿論開発者にとっても難しい悪条件が揃っているし、演奏者にとっても難しい悪条件が揃っているという、非常に扱いの困難な楽器なのですが、現代は非常にそれらの問題も解解消され、実践的にほぼ問題なく使えるレベルにまで進化しています。
[23:38]
私は嘗てバンドサウンドの中の一つのアンサンブル的なニュアンスでギターシンセサイザーを使用していました。或いはより奇を衒って、パーカッションのサウンドをギターから出すというような、奇妙な事をしていました。
[24:00]
しかし、今回はギターシンセサイザーが進化したからこそ可能になったソロというものをやってみようという事になり、私が使用したのはBossのGm-800という最新のギターシンセサイザーであります。しかしながら、色々先程「難しい条件がある」という事をお話ししましたけれども、ギターシンセサイザーの中には音源が入っている訳ですが、その音源を呼び出して演奏することはできるのですが、さらにそれを自分なりに再編集して音を再構築するという作業が、未だちょっと難しいと、困難、煩雑であるという状況がございます。Gm-800で作られた音源の信号をGm-800自身で鳴らすことはそれ故しませんでした。
[25:05]
Gm-800で作られたシンセサイザーを作動させる信号をソフトウェアシンセサイザーに転送して、そのソフトウェアシンセサイザーを音源として鳴らす方法を採っています。
[24:25]
先程もモジュラーシンセをビンテージの機械に例えましたけれども、今回鳴らしたソフトウェアシンセサイザーも、どちらかというとまあまあビンテージに近いようなもので、何というんでしょうか、物理的な形態というよりもソフトウェア的にクローン化したもので、KorgのTritonというシンセサイザーです。Tritonというのは私は嘗て物理的な姿をしたTritonをレコーディングで使ったことが有りますが、アルバム「セイレーン(Siren)」の中で使われています。
[26:10]
で、Gm-800というのは、ギターの各弦毎に演奏に必要なパラメータを変える事ができます。その結果何ができるかと言いますと、弦毎に違う音色を設定する事ができる訳(わけ)ですね。巷にあるギターシンセサイザーのデモ演奏などを見てみると、しかし、殆どが、ピアノならピアノの音を設定したまま、「ギタリストがピアノを弾いています」とか、「ギタリストがサックスを演奏しています」といったような状況の中で、ギターシンセサイザーが使われているのですが、私はその弦毎に様々なパラメータを設定していくことができるということを利用して、各弦毎に統一されていないバラバラのサウンドを設定しました。その結果、普通にギターとして演奏している、それなりに整ったフレーズであるにも関わらず、弾かれる弦によってバラバラの音色でパッチワーク的な、継ぎ接ぎ的な音色でフレーズが構築される訳で、非常に奇妙なニュアンスが出て来るわけですね。
[27:41]
そんな演奏をやってみましたが、これが私としての一つの実験ケースでありまして、将来的にはこの方法をもう少し何か煮詰めた、アイデアなり何なりを付加しながら、私なりのギターシンセサイザーという物の使い方を作り出して行けたら良いなと言う感想を持ちながら、ライブを終えた訳であります。
[28:16]
(「そろそろ休憩しましょう」というキャプションと共に、平沢進が三匹の猫たちや一頭のチンパンジーと戯れながら、南国のビーチでトロピカル・ジュースを飲んでいるAI映像が映る)
[28:22]
ここで、五分間の休憩を挟みたいと思います。五分後に又お会いしましょう。
[28:31]
(タイトル画面「平沢進の亜種音TV 非コード人のアコード+タオの3つのエコー」の文字が映る。)
[33:30]
さて、それでは、「タオの3つのエコー東京編」についてお話をしたいと思います。「「タオの3つのエコー」はそもそも中国ツアーの為に作られたものでありまして、中国ツアーが終了した時点で、既にback Space Passは一度開催しておりますので、ここでは又違った視点からお話が出来れば良いかと思っております。
[33:56]
ここでも選曲についてちょっと話してみたいと思いますが、中国で演奏するのは初めてでありまして、初めての人達に対して「平沢というのはこういう活動をしている人間なんだ」という事を網羅的に分かって頂く為に、「平沢入門編」のような選曲をした訳であります。
[34:20]
で、そういう選曲のし方は日本ではやりません。しかし、初めて行く土地で、本当に自分が歓迎されているのか、どの程度認知されているのか、も分からず、しかも「圧倒的な異質感」というものを目標として乗り込んだ時に、他の人々(出演者)と圧倒的に違う空気を作り出す機会として認識してもらう為に、「平沢入門編」という選曲をした訳でありますが、更に、フェスティバル、フェス向けに構築された選曲である為に、結構何というか(観客が)ライブ的に乗り易い傾向の曲が並んでしまった訳で、それは勿論意図した事なんですが、私にとっては非常にきついライブになってしまいました。
[35:16]
声を張って歌い続ける選曲が多く、後半に「庭師King」と「Rotation(ロタティオン)」がくっついているという、これは私にとっては五分間全力ダッシュのようなもので、「無事歌い続ける事ができてほっとした」と言うようなきつい現場でありました。
[35:41]
日本の皆さんは、その選曲を、つまり言ってみれば「平沢入門編」、言い換えれば「平沢ヒット曲編」的な、悔しいですが、結果的にそのようになってしまった選曲を羨ましがったようですが、少なくとも、日本では、ライブの回数を多く、動画サイト等(など)でもある程度認知されているものとして、日頃のライブというものは、入門編というより、活動の、長い活動の断片的な選曲をしていくようになる訳(わけ)ですね。
[36:21]
しかし、まあ、初めての中国公演ということで、「一体あいつはどんな事をやったのか?」という事を皆さん興味が有ると思いましたので、東京で再現してみることにした訳(わけ)です。
[36:35]
そして、再現するに当たって一つ課題が有りまして、オープニングで中国語がアナウンスされるんですが、その中国語が一体何と言っているかについて、知って頂く必要があるという事です。それを、中国語を和訳したものをスクリーン上に表示するという事をやりました。そもそもそこで流れている中国語のアナウンスというのは、私がAIを使って中国語に訳したものであって、喋っているのもAIです。
[37:17]
「おそらくそれは違和感のある中国語だろう」と予測して、そうしています。しかし、むしろそれを期待して、誰にもチェックを依頼することはしませんでした。中国語が解かる人間にチェックをして貰うという段取りは省いています。あの変な、恐らく意図的に変な感じをライブの中に組み込みたかった訳(わけ)です。というのも、インターネット的なコミュニケーションというか、専門家や敷居の高いインフラを使わずに、コンピュータに助けられた市民的コミュニケーションという質感を出したかったからな訳(わけ)です。
[38:01]
そして東京では、和訳を右側に表示し、その日本語も、どことなく稚拙なものであり、インターネットのコミュニケーション的な質感を達成できていたのではないかと思います。
[38:20]
ということで、大体話そうと思っていたところはここ迄なんですが、既に「タオの3つのエコー」はお話ししてしまっているので、これ以上、ネタが、どうも私が乗り気になれるネタが有りませんので、ここから先は質問にお答えしていこうかと思います。Xのほうから、この2つのライブに関してされた質問を拾って来ましたので、それについてお答えしたいと思います。
[39:01]
まず、これで行きましょう。「非コード人のアコード(Accord of the Uncoded)」についての質問です。
(質問1)
Q:「本日ライブ配信を見ている際に気づいたのですが、Parthenonでのソロ演奏の隣に有るコンピュータのステッカーには『タオの3つのエコー』と書かれていましたが、これは何か深い意味が有るのでしょうか?」
.
A:という質問ですが、特に深い意味は有りません。これは私のズボラが招いた結果です。まず、この時使われていたコンピュータという物は、中国公演の時、メインで使われていたコンピュータです。そして、蓋のところにですね、蓋を開けた状態で使用する時に、蓋が観客側に向いている為、何かそこに、ライブに纏(まつ)わる何かをデザイン的に施したいな、と思って、デザイナーの中井(中井敏文/なかいとしふみ)さんに相談した所、中井さんがステッカーを作ってくれまして、「タオの3つのエコー」に関する大きなステッカーを作ってくれまして、それを貼りました。そして、そのツアーは終わったのですが、剥がすのをサボっていまして、そのまま使った訳(わけ)です。それが恐らくモジュラーシンセのソロの時にカメラか何かに大写しされたのではないでしょうか。つまり、そこには何の意味も無く、ただ私のズボラが招いた質問でありました。えーと、そして次です。
[40:52]
(質問2)
Q:「今回のライブと『非コード人のアコード(Accord of the Uncoded)』の照明チームは、『Hybrid Phonon 2566+』の照明チームとはまた別ですか?」
.
A:という質問です。『Hybrid Phonon 2566+』と今回の『非コード人のアコード(Accord of the Uncoded)』の照明チームは同じです。しかし、『Hybrid Phonon 2566』、つまり追加公演(Hybrid Phonon 2566+)前の本編ですね、の照明は違います。ここの所、一定期間を掛けて、私のライブチームは、音響と照明チームを入れ替えてきました。それで、今回の照明チームは、『Hybrid Phonon 2566+』、そして中国公演、そして 『非コード人のアコード(Accord of the Uncoded)』、それから『タオの3つのエコー 東京編』という公演の照明を務めてくれた照明のチームで、新しい照明のチームであります。今後もこのチームと一緒にライブを作って行きたいと考えております。
[42:14]
(質問3)
Q:「(アルバム)『unZIP』制作や、『非コード人のアコード(Accord of the Uncoded)』に於いて、マインド・マップを使用されましたか?」
.
A:という質問ですが、使用しておりません。何故かというと、色々な事を考えるのに、最近はAIを使うケースが多くなっています。その方がどうも手っ取り早いというケースも有ります。例えば、脳内で何かモヤモヤしていて言語化できない、或いは靄の掛かったようなイメージが有って、それを鮮明に描く事が難しいという時には、マインド・マップを使うのが適しています。そうでなくて、コンセプトや或いは具体的な事明確に有りながら未整理であったりとか、或いは、より拡張したい、というような時には、AIが適しており、AIを使いながら、曖昧だったものを明確化していくという作業が出来るのですけれども、何と言うか、マインド・マップに比べて言語化に近い作業の中で考えを纏(まと)めて行こうとする時には、AIを使うのが便利なようです。と、最近、経験的に分かって来ました。
.
頭の中の自分一人で行うセッションに於いて、マインド・マップが適しているのは、モヤモヤしたイメージとか、或いは言語化はされていないけれどもはっきりとしたビジュアルが有るというような状況の中で、何かを整理したり作り出したりする場合にはマインド・マップが適しています。で、今回の『非コード人のアコード』とか或いはunZIPとか、コンセプトがはっきりしているようなものには、マインド・マップというよりAIを使うということが適しているという事が分かり、今回はAIを使いました。そして次です。
[44:37]
(質問4)
Q:「『非コード人のアコード』では、『In A Model Room』のジャケットがオープニングに大々的に映し出されましたが、敢えて演じるのを避けた理由は何でしょうか?また、これから演じる考えはあるのでしょうか?」
.
A:ちょっと意味が分かり辛いのですが、「ファースト・アルバムの曲を演奏しなかったのはなぜか?」という事でしょうか。「あそこまではっきりとビジュアル的に見せておきながら、ファースト・アルバムを省いているとは怪しからん」という事でしょうか。冒頭でも説明しましたように、unZIPがどういうメッセージであるかという事を示す為に、最初の段階であるIn A Model Roomの幽閉された人々を映し、それが解放されていくというプロセスを見せる為に、あのようなビジュアルを採用しています。ですから、それは、ファーストアルバムの演奏の予告ではなく、むしろそこから遠ざかるという理由で使われています。冒頭の「非コード人のアコード」の選曲の時にもお話ししたのと全く同じ理由です。
そして、「今後ファーストアルバム的な古いものを演奏する考えはあるのでしょうか?」というご質問だったとは思うんですが、そういう予定が有るとも無いとも、断言する事が出来ません。それは必要に応じて引っ張り出して来る事が可能性としては有りますが、「ここで会場を盛り上げる為に一発『美術館(で会った人だろ)/Artmania』を演ってやろう」という目的で使う事は有りませんので、予めご了承ください。次の質問です。
[46:36]
(質問5)
Q:「『非コード人のアコード』では、会人(えじん)を巧みに操る平沢さんが印象的でしたが、あの技を身に着ける為には、どんな修行をされたのでしょうか?」
.
A:ということですが、修行は必要有りません。金銭を介した雇用関係が必要です。と言うのは嘘で、猫が猫缶(キャットフード缶詰)を開ける事に反応するように、会人(えじん)には人間のある部位の関節の音に反応して膝を折り曲げるという習性が有ります。それを利用したまでです。これで宜しいでしょうか。それでは次に「タオの3つのエコー」に関する質問を拾ってみましょうか。
[47:29]
(質問6)
Q:『タオの3つのエコー』で『夢みる機械(Dreaming Machine)』の前奏でスクリーンに映し出されていた足踏みと手拍子の映像、あれはどちら様ですか?」
.
A:という質問です。あれは、まずなぜあの映像が東京編では差し込まれていたかと言いますと、中国であれを演った時に、TAZZとSHOOが足を踏み鳴らしたり手拍子をしたりする様子が、ほぼ最前列の人にしか見えなかったという事が有りまして、東京ではあれを映像にして、より、何をやっているか認識し易い様にして、観客の対応に繋げていこうという事で、あれを映像化して嵌(は)め込んであります。で、あそこで足踏みをしているのはTAZZです。誰かエキストラを使って撮影したのではないかと思われるかも知れませんが、実際あれは、TAZZがスタジオに呼ばれて、TAZZが実際に高く足を上げて踏み下ろすという行為をやったものが撮影されて投影されたものであります。これでよろしいでしょうか。そして次です。
[49:02]
(質問7)
Q:「『非コード人のアコード』『タオの3つのエコー』といったライブのタイトルはどのように決めておられるのでしょうか?」
.
A:という質問です。なかなかこれは説明し辛いんですけれども、タイトルというのはコンセプトの体現ですから、それを表す言葉を組み合わせていくという作業な訳(わけ)です。では、どうやってその言葉を見つけるかという事ねんですが、抽象化と360度展望という方法を使います。これは私が勝手に付けた名前ですけれども、例えば、In A Model RoomのRoomから解放される事が「Roomからの解放」という具体的なエピソード(event)ではなく、「unZIP」とか、「非コード人のアコード」という言葉の使い方に変換される過程をお見せしましょう。
まず、Roomの中に閉じ込められている人間という状況を一段階抽象化すると、「不自由な空間に幽閉された人」あるいは「行動が制限されている人」のような抽象的な表現になります。一段抽象化したら、その段階にまで自分が登り、360度を見渡します。360度見渡した時に、同じ概念に相当するより抽象化レベルの低い、つまり具体的な状況を発見する努力をします。つまり、物理的に制限された状況を「圧縮」とか、「高度化された」というような、より具体的なエピソード化した言葉に言い換えて行く訳(わけ)です。
その具体性の段階に降りてくると、「unZIP」「非コード人のアコード」というような物語性を帯びた言い換えであるにも関わらず、同じ概念を表しているタイトルにする事が出来るというプロセスを経て作られる訳(わけ)です。お分かり頂けましたでしょうか。非常に言葉にしようとすると複雑というか分かり難(にく)いのですが、この抽象化と360度展望というのは、実際私が日頃Xを投稿する時にも頻繁に使うテクニックであります。注意して見ていてください。「おそらくこれは、そのプロセスを経て発言してるんだろうな」という事を見つける事が出来るかも知れません。そして、最後の質問ですね。これを最後としましょう。
[52:10]
(質問8)
Q:「『タオの3つのエコー』のBSP、Back Space Passで、レーザーハープの身振りはAIを参考にしたと仰っていましたが、今回のライブでもそうなのでしょうか?」
.
A:というご質問で有りますが、そうであり、そうではありません。と言うのも、私がAIに求めたのは、レーザーハープの振りではなく、単に体の動かし方で、それがレーザーハープの振りと振りの途中経過に挟まれたリするケースも有りまして、どこからどこ迄がハープの為の動きか、AIの提案かの境が、曖昧な所が有ります。
以前にも何度かお話ししている事ですが、レーザーハープはそもそも身体の大きな動きを必要としない電子機器の扱いに於いて、身体性を拡大する目的でも使われています。それ故にハープの演奏をする体の動きがどう見えるかと含めてレーザーハープのセッティングはアレンジされており、時には中に当て振りも含まれていることが有ります。それは動きに連続する流れを作るための途中経過として、不要な動きをわざと割り込ませるなどして作られています。
こうしたハープに関する動きと、AIの提案による動きが混同されていました。それが今回の「タオの3つのエコー」で私がステージの上で見せたAIの提案による動きです。と、レーザーハープによる必然的な動きの複合的な動きという事でした。
[54:15]
という事で、そろそろ終了の時間が近づいて参りました。今回は録画でお送りしました。なかなかインプラントの手術が終わらないのですが、いろいろ事情があるわけです。骨に穴を開けて金属を埋める訳(わけ)ですから、それがしっかりと固定される迄の期間、待つ時間が必要であるとか、色々ある訳(わけ)ですね。
そんな事で、まだまだ時間はかかります。インプラントの手術は全部で四か所ですが、既に二回は終わっております。この後、今月中に二回有って、大きな手術はそれで終わりです。顔に影響が出たり発音に影響が出たりという事は、今まで無かったのですが、何が起こるか、或いは口を開いた時に何か見えてしまうかも知れないということも含めて、大事を取って録画という事にさせて頂きました。
そして今後、何も突発的な重要イベントが無ければ、次回はフジロック(Fuji Rock Festival)の後にこの亜種音TVは放送される予定であります。それでは、また次回の亜種音TVでお会いしましょう。ごきげんよう。
[55:41]
[56:55]
1. 無題