ストリーミング放送:2020/7/4
(日本語/Japanese)
[01:14]
平沢進:ごきげんよう。平沢でございます。Back Space Pass 「会然TREK 2K20編」ただ今より始めたいと思います。
[01:31]
厳密に言うと「会然TREK」という言葉を使って始めたのは去年の夏からでありまして、途中Battlesの前座などで別の名称を使ったりもしましたけれども、まあ、事実上、約1年がかりで、やっと終了致しました。
[01:51]
で、既に、なんだ、Fuji RockとBattlesに関しては前回のBSPでやっておりますので、今日はですね、大阪、東京、東京と、のエピソードなんかを話したいと思います。
[02:14]
早速、オマエタチは私のシャツを特定しに掛かっているのではないかと思いますが、これは探しても無駄です。これは既製品ではございません。あの、はい。
[02:33]
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「会然TREK 2K20▼02 大阪公演: Grand Cube 大阪」
<舞台デザインは中井敏文氏による/The Stage Design was by Toshifumi Nakai>
それでですね、まず、大阪「会然TREK」皮切りでありました、大阪のエピソードなんかを話して行きたいと思うんですが、だいぶ前の事なんでね、あまり覚えてないんですけど、まず、今回ですね、普通のライブとはちょっと違う形を採ってみようということで、舞台装置のデザインですね、舞台の総合的なデザインを中井[敏文]さんにお願しました。中井さんは私のCDの作品等を常にデザインして頂いているデザイナーですけれども、ちょっと映像を使ったりですね、あるいは、何かにつけ、この、バンドの舞台美術というのがみんな似たり寄ったりで、特に映像なんかは、映像の専門家が作ったものっていうのがだいたい似てる感じでつまらない、ということで、とりあえず、大和久[マサル]さんとは、いつもインタラクティブ・ライブ等でCGをくれている大和久さんとは違うタッチという意味で、まず、中井さんに、デザインを、デザインと映像をですね、お願しようということで、あのような形になりました。ディスプレイも全面ディスプレイというより、小さな範囲のディスプレイの中に映る、幾何学的な、幾分、平面的で、色もそれほど使わないデザインの動画を非常にセンスがよろしくお洒落だったと思います。
[04:28]
<舞台空間の利用:テント、セグウェイ、可動式山台、チェンソー>
《セグウェイの使用》
それとですね、まあ、あの、ああいう巨大なテントというか、私はピラミッドど呼んでいるんですけれども、ああいう物を使っていろいろ動き回れると、空間を。そもそも、空間が広かったものですから、空間を生かしたデザインを、まず、ヒラサワに与えたら、どんな演出をするか、というところも含みまして、あのような形になっているんですが、まあ、そのデザインを受けまして、私は、大きく動き回る演出を考えたわけですね。そこで考え付いたのが、Segwayです。Segwayを使って、いろいろ動き回ろう、と。それから、山台(やまだい)ですね、それぞれの人間が立っている山台を、かつてやったんですけれども、可動式にして、これを、入れたり、出して来たりして、ステージの状況を変えるというようなことを実施しようと思いました。Segwayについては、割とぎりぎりに考えまして、質問のところにもですね、よく「これは誰が考えたんですか?」とかいう質問が有りまして、「Segwayについての質問。誰が考えた」とか、それから「チェーンソーについても、誰が考えたんだ」と、「そんなこと知ってどうすんだ?」と思うんですけれども、まあ、一応、私が考えました。
[06:03]
で、えー、ところが、Segwayを思いついたのが、かなりぎりぎりになってからで、スタジオでゲネプロ、といって、PA、照明さん、舞台の担当者を全員集めまして、舞台とそっくり同じ稽古をする、という場まで、あと数日というところで、Segwayを思い付きまして、「Segwayはいいけれども、いったい乗れるのか?」ということが心配だったんですが、まあでも、「これ、面白そうなんでやるしかない」と思って、すぐに、その日のうちに会人に連絡を取りまして、「どこかSegwayを売っている場所へ行って乗ってきてくれ」ということで、出動して頂きまして、Segwayに乗って頂きました。そしたら、思ったより簡単で、「あと数日間の間に練習すれば、必要な運転は出来るだろう」ということで、その場で調達して頂きました。それから、ゲネプロまでの間、個人練習ということで、まあその、短い数日間の個人練習でしたが、その中で必要なテクニックは習得できたと。非常に簡単な乗り物でした。
[07:25]
《TAZZがセグウェイごと舞台から転落した事件》
で、えー、さて、Segwayといえば、大阪で、Segwayといえば、大事件が起こりましたね。えー、それは目撃されておりますが、会人TAZZがですね、定位置で、Segwayで最初に登場して来る時に、定位置で止まるはずだったのが、止まらずにそのまま舞台から落ちてしまったと、Segwayごと舞台から落ちてしまった、という事故が起こりました。これはですね、TAZZの名誉の為にも言っておきますが、TAZZのせいではございません。実は、舞台の上は非常に暗くてですね、それから床が真っ黒で、目印になる物がほとんど無いんですね。まして、視野が狭い会人にとって、そういう状況でSegwayを運転していくには、目印が必要である、と。目印としてですね、レーザーハープのスイッチ、両端で会人がレーザーハープの操作をしていたスイッチなんですけれども、あれがステージに出てきたら、それを目印にその前で止まる、という段取りになっていたんですが、これは、スタッフがボケてまして、出さなかったんですね。出さないので、TAZZとしては、どこまで行っても無い、と。「あれ?どこに有るんだ?どこに有るんだ?」ドーン!という、このような感じで事故が起こってしまいました。
[08:59]
《セグウェイの注意すべき点》
それとですね、Segwayはスピードが、最高スピードが[時速]30キロまでは出ないんですけれども、20何キロ、出るんですが、初心者モードですと、そこまで出ないようになっているんですね。で、出そうとすると、初心者モードで出そうとすると、「いかん」と。Segway自体が乗っている人に警告する意味で、後ろに反って来るんですね。で、実はこの方が危ないと思うんですけれども、そのまま後ろにデーンと倒れてしまうんです。で、初心者モードを解除するにはどうするかというと、一定時間の練習が済んだことがSegwayに記憶されていまして、それを、まあ、「一定時間過ぎましたので、よりスピードが出るモードにしてください」とこちらで操作をするわけですね。その操作をすれば、スピードをどんどん上げていってもそのまま進むんですが、操作を、設定をしないまま使ってしまったので、ついついスピードが出過ぎてしまうと、後ろに横転してしまうという、恐ろしい状況の中でやっておりましたが、流石に横転する人は出ませんでした。
[10:24]
《山台が立ち往生した事件》
それとですね、まあ、当日でしたので、山台を動かす、我々、「赤子(あかご)」と呼んでいますけど、赤い服を着て白いマスクをした、「どうせ見えるなら黒子じゃなくで赤くしよう」ということで、あのようになってますけれども。赤子がですね、舞台の山台を出すのに手間取ってしまった、と。なぜかというと、ステージの上に布(きれ)みたいな物が貼ってまして、滑り止めなんですけれども、これが山台の滑車に食い込んでしまって動かない、ということが生じまして、とうとう、私の出番が、台に乗って歌い出すのに間に合わずに、山台が途中で立ち往生してしまった、と。しかたなしに、「しょうがないや」と、「じゃあ、ここは、普通に、山台に乗らずに歌おうじゃないか」ということで、舞台の端から端まで往復しながら歌うということで、その場を切り抜けた、ということでございます。そのようにですね、大阪初日は、非常にトラブルが多かったのですが[注:実際は山台のトラブルは大阪公演2日目でした]、まあ、それなりにこなせたんじゃないかという感想であります。
[11:54]
<3月の東京公演のための選曲>
それでですね、大阪が終わった後、次の東京までの間に2週間ぐらいしか時間が無かったんですね。で、大阪の演出と仕込み、楽曲の仕込みとかアレンジをやっている間に、やっている時間が精いっぱいで、2週間後に迫った東京のこと等考える時間が無かった、ということで、実は大阪のホテルで、慌てて選曲を致しまして、それから、ドラマーのレルレに曲を渡さなきゃいけない、ということで選曲をして、すぐにスタッフとレルレに曲を渡したと。曲もそろえるのが間に合わないので、「Youtubeで探してくれ」という素人のようなことをしてしまいましたけれども。そして、その、東京の準備を大阪のホテルでやっている間にも、まあ、欲が出まして、「幾つか曲を新たに加えたい」と。その曲の候補がですね、TAZZからリクエストが有りました、「Looping Opposition」、これを、レルレを加えて是非やってみたいということで、「Looping Opposition」の実は歌詞を書き換えていました。大阪のホテルで。
[13:27]
何かというとですね、この大本、Looping Oppositionというのはそもそも、どのような形で世に出てきたかというと、昔、「不許可曲集」というものがございまして、これはカセットで発売されたんですが、何かというと、私が没にしてしたものが、没(ボツ)テープが収められている箱からですね、うちの兄貴[平沢裕一]が、いろいろ拾って来まして、「お前、これなんで発表しないんだ?」ということで、「いや、いいと思わないからだ、ということで捨てたんだ」と言ったらですね、兄貴が「いや、こればお前の許可を得ずとも、発売、発表する、公開する」ということで出来上がったのが「不許可曲集」というカセットです。この「不許可曲集」の中に入っていたのがLooping Oppositionなんですけれども、ゆえに、スケッチの途中みたいな形で放り投げてあった物なんですね。
[14:34]
で、実は、もっと遡ると、マンドレイクの時代に、まだ、マルチトラックのテープレコーダーが、民間人が手にできないような時代に、カセットテープの録音ヘッドに、録音ヘッドと消去ヘッドに、セロテープを貼って、一度録音したものが次に重ね録音できないようにしながら、オーバーダビングをしていくという、一人でいくつもの楽器を録音していくという反則技を使って、一人、ソロアルバムのような物を作ったことがあるんですけれども、その中にそもそも入っていたんですね。で、まあ、そんな古いもので別に愛着が無かったんで捨てたんですけれども、そういうものが世に出て、そのまま、その後のカセットブックか何かに入って、いろんな成り行きで入ってしまったと。そういう類いのものだったんで、「ちょっと歌詞が雑だな」と思いまして、歌詞を書き換えてました。えー、まあ、書き換えても大差は無かったんですけれども。それに加えて、「おやすみDog」ですか。「おやすみDog」のアレンジを考えたりなどを、大阪のホテルで、前日と終わった日ですか、にやっておりました。
[16:04]
<ライブ中の食事について>
それとですね、えーと、気になる、まあ、ほとんどの人は気にならないと思いますけれども、まあ、私がピタゴリアンであることから、普通にしていると、食べられるものが手元にやって来ないということでして、今回どうしたかということなんですけれども、まず、前日にですね、あれです、あの、大阪のパプリカ食堂というところに行こうとしましたが、グループで予約が入っているという情報を入手しまして、「これはよろしくない」ということで、急遽、別のお店に致しました。この店については教えません。ヒントも教えません。そこで、まあ、夕食を摂って、そして翌日の楽屋がこれがまた素晴らしかったですね。あの、大量のサラダと、トルティーヤ・チップですね、これにアボカドのディップとサルサ・ソースですか、がふんだんに置いてありまして、ですから、私一人ではなくですね、できるだけ野菜を摂ろうと改心している鎮西なんなんかを楽屋に呼んで一緒に頂いたりしておりました。
[17:31]
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「会然TREK 2K20▲03 東京公演: Zepp Tokyo」
<Zepp Tokyo 東京公演の選曲>
まあ、そんなこんなで、大阪はとりあえず終わりまして、次、Zepp Tokyoですね。Zepp Tokyoでは、まず、大阪、東京・NHKホールでは、ソロの楽曲をやる、と。それに加えて、中間のZepp Tokyoでは、ハイブリッド形式でやろうと思いました。ハイブリッドっていうのは、核P-MODELとソロが合体したものです。ゆえに、ちょっと、椅子も無いことだし、よりライブ感があって、身体を動かせるようなものということで、ハイブリッドにして、生ドラムを投入したという感じです。
[18:20]
で、まあ、短い時間でですね、レルレはよく憶えてくれましたね。私だったら絶対憶えたくないですね、あんな沢山の。そして、その時レルレに言われて初めて気づいたんですけど、大阪と一曲も同じ曲が無いということで、「ああ、そうだったんだ」と。普通、一つのバンドなり、ミュージシャンが一定期間やる一つのツアーでは、曲順、選曲っていうのは大体変わらないでしょうね。せいぜい、曲順が変わったり、1~2曲が変わったりする程度なんですけれども、無意識に全曲変えておりました。で、なおかつですね、レルレ君にはですね、昔のBox CDなど進呈したりしていまして、彼に言わせれば、「その中にも知っている曲が一曲も無い」ということで、「いったい何曲あるんだ」と言われたんですけれども、私が憶えているのは、20年ぐらい前に登録曲を数えたら、300曲ぐらいありまして、それから20年経ってますから、いろいろアルバムも含め、企画、それから劇伴等を含めたら、おそらく400は優に超えてるだろうと。自分でもほとんど覚えてない曲ばかりですが、まあ、その中から選択できるので、非常に資源には困らないということであります。
[19:58]
<ベースの変更>
そして、えーと、ああ、そうですね、ここで、一つ、皆さんの分からないところで起こった、一つの偶然の、小さな黄金の10年周期みたいな事件がありました。というのは、皆さん、お気づきでしょうが、NHKホールでは、Zepp Tokyoで使わ、あ、違う、大阪、あ、違う、(扇子で手を叩く) Zepp Tokyoでは、大阪で使われたベース、赤いベースですね、Playtechのベースです、が使われていませんでした。実はこれには背景がありまして、東京で、現場で、Zepp Tokyoに入ってリハーサルをやっている最中に突然、Playtechの赤いベースが壊れたんですね。「壊れた、どうしよう?予備が無い」と思っている時にですね、客席から、EVOベースをケースからスッと出した、EVOベースの開発者が現れまして、まるで、赤いベースが壊れるのを知っていたかのように、「EVOベースを使ってくれ」と。いう風にして、EVOベースを貸して、差し出してくれました。まあ、これは、ラッキーだということで、EVOベースに取り換えたわけです。
[21:47]
それはいいんですけど、Playtechのベースに、勿論Playtechのベースっていうのは1万円しないですから、それに引き換え、EVOベースは30万を超えて、しかもアルミボディーで、開発思想の中に、シンセベースに負けない音がすると、打ち込み環境に適した音がするようにチューニングしてあるということで、ちょっと、もう、シンセサイザーのような野太い音がしてびっくりしました。で、まあ、お陰さまで、EVOベースがやって来たところで、「じゃあ、SSHOのギターも[Fender] Jazzmasterから、EVOに替えてしまおう」と。でステージ上3人共、EVOを使うというシーンが偶然出来上がった次第であります。
[22:35]
<ドラムスの配置>
それとですね、私が中心にいて、一番高い山台があって、その横に、普通はドラマーが真ん中にいるんですね、ドラマーが真ん中にいるというのは、実は合理的な理由がありまして、低音がどこに向かって行くかとか、いろいろ、ドラマー、リズム隊の音像がどこに在るかということによって、ミュージシャンの演奏し易さというのに係わってくるんですけれども、まあ、ちょっと見栄え的に変わった感じにしようと思いまして、レルレを横向きにすると。そうすると、ベース・ドラムがもろに私の方に向くわけですね。この、ベース・ドラムの革の振動が、そのまま私の体にぶつかって来ると。で、そうするとですね、普段、客席のスピーカーが大きな音で鳴って、それが私の台の上に共鳴して台が鳴り、その台が私の骨を鳴らし、それが頭蓋骨を鳴らすというような起こるんですが、そして音程が取りづらくなっていくという現象が起こるんですが、それに加えて、横からもろにレルレのベース・ドラムの音が来ると。これは堪(たま)ったもんじゃないので、「こいつをどっかに遣ってくれ」ということで、遮断しました。アクリルのパネルで遮断しました。最近よくドラマーは遮断されていますけれども、レルレも最近のドラマーの扱いに準じて隔離致しました。それがレルレのドラムの周囲にアクリル板が置かれていた理由であります。
[24:39]
<Zepp Tokyoの舞台デザインも中井敏文氏/The Stage Design for Zepp Tokyo was by Toshifumi Nakai>
そしてZepp Tokyoでもですね、映像、それから舞台のデザインは中井さんです。LEDのモニターが今度は垂直、大阪から打って変わって、水平になりましたので、ここでまた同じコンセプトの、横に適応した映像が上映されました。これも幾何学的で、或る意味平面的で、非常に新鮮な感じが致しました。
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「会然TREK 2K20▼04 東京追加公演: NHKホール Ghost Venue」
<無観客ライブの実施>
[25:15]
そんなこんなでですね、まあZepp Tokyoは終わりまして、問題は次ですね、NHKホールの実施に当たって、その実施を、ライブの実施を取り巻く状況が非常に不安定で、「できる」だの「できない」だの、ホールがオープンするとかしないとか、みたいな、非常に不安定な情況がありまして、なんとか否定的な形でもいいから、一旦安定的な状況を定めて、それに合わせて対応しよう、と。で、情況が好転しようが悪化しようが、方針は変えないということで、「在宅オーディエンス・ライブ」という決定を、決断を下しました。
[26:17]
まあ、「在宅オーディエンス」という言葉があるようにですね、私はもうかなり昔から、オーディエンスが自宅にいるという形は普通に執(と)って来ましたので、特にそれで変わった対応がある訳ではなく、まあ、全員が今度は在宅だということで、カメラアングルを豊富に使い分けられるようにすれば良いのではないか、ということで、NHKは大阪と同じセットでほぼ同じというか同じ曲順でやるということが決まっていた訳ですから、そこに観客は全て自宅のモニターを見ているということを前提にしたカメラワークに頼る演出に若干変えればいいということで修正したのみです。
[27:19]
で、質問のほうにも有ったんですけれども、「この度の選曲と曲順が絶妙である」と。「一語一句、まるで現在起こっている出来事に符合している」と。「シンクロしていて、非常に分かりやすいし、今まで分からなかった歌詞の内容とかも腑に落ちることが沢山有り、全てが繋がった」という非常に嬉しい評価を頂きまして、私も長年やっていて良かったな、と思った次第ですけれども、私の選曲が素晴らしかったというよりは、まず「Blue Limbo」からの曲も多かったと思うんですが、これはそもそもディストピアな、誤情報と恐怖と不安で民衆を操作して良からぬ世界を運営していくというようなディストピアの話ですが、まあ、この時、これは今から17年前ですね、今から17年前のアルバムなんですけれども、私としては今と同じ情況が普通に見えていて、それが今は私がその当時見ていた情況がより明からさまになっているだけの話なんですよ。で、私の曲が分からなかったと言っていた人達の中にも、「なるほどそうか、腑に落ちた、非常に分かった」という感想もちらほら見かけたりしています。そんなこんなでですね、別に私はいつもと同じことをやっただけです。ですから特に選曲の能力が有ったとか、そういうことでもないし、そういうことではございません。ちょっと、こう、長くなりましたけれども。
[29:30]
<チェーンソーの使用>
それでですね、「在宅オーディエンス」の決断を下して、日程が二転三転してあの日になった訳ですが、なんと、これは後から知ったんですが、なんでしたっけ、二つの開運日が重なるという超大吉の日にそれが偶然当たった訳ですね。この降って湧いた感じがなんとも「黄金の10年周期」的風味満載で、背筋が凍る思いでありました。この良き日にですね、あ、そうそう、この良き日に行われるライブの最終的な演出が実はまだ決まっていなかったんですね。というのは、テントですね、私がピラミッドと呼んでいるあのテントを最後、崩壊させたかったんですけれども、どうやってそれをやっていいかが思いつかなかったんです。あれは鉄骨で上から吊られていまして、鉄ノコでギコギコ切って、骨を折って行くのか、あるいは切り裂いていくのか、ていうことで、何かもっと、ショッキングで、おそらく初めてライブをご覧になる方もいるだろうということで、ちょっと印象に残るいたずらをしようと思いまして、
[31:13]
「そうだ、チェーンソーを使おう」ということになって、チェーンソーで最後あのピラミッドを切り裂いてしまうと。と、同時にその「幕を切って落とす」という儀式的な意味合いを、私一人ですけれども、心に胸に秘めて執り行いました。チェーンソーなんですが、あれは非常に危険です。まず「チェーンソーを使う」と言った時に、松村舞台監督が、もう慣れっこですから、「ああ、そうですか」と。「そうきましたか」ということで、即座に舞台でチェーンソーを使うことについて、消防法のチェックだの、舞台のホール側の許可だのを取るために、いろいろ書類を書くなどの行動にすぐ出てくれました。そして、チェーンソーを借りる手配をしてくれまして、ゲネプロ、もうこれも数日しかなかったんですが、ゲネプロの時に実際に同じ素材で出来た幕をチェーンソーで切ってみるということをやるために松村監督は全て準備してくれました。実際ですね、チェーンソーを使って、幕を、ピラミッドと同じ幕を「さあ、切りましょう」と。勿論スタッフが切る役をやったんですが、もう瞬時にチェーンが布(きれ)を巻き込んで体がグンッと持ってかれると。「非常に危険だ」ということになりまして、これはチェーンソーをそのまま回して解体していくのは危険極まりないということで、チェーンそのものを外しまして、先端にカッターナイフを付けまして、エンジンだけ回すというような方法で乗り切りました。見た目にもそれほど遜色なかったんではないかと思います。むしろチェーンソーで切るより良く切れたかもしれません。
[33:28]
<360度カメラとその他のカメラ>
それとですね、カメラ、オーディエンスは客席に固定されている訳ではなくで、カメラがオーディエンスの眼の代わりになる訳ですから、いろいろ視点が変えられるということで、「360度カメラを使ってしまおうではないか」ということを私がまた言ってしまいました。で、映像スタッフが「そうですか」ということで「そうですか、そう来ましたか」ということでですね、一気にまず、Insta 360 の会社から1台、プロ用の360度カメラを提供頂きまして、これが使えると。これをメインにして、なんと8台の360度カメラが回ってます。それはクレーンに付いていたり、それからレールで移動するカメラに付いていたり、いろいろなところに、ステージに2本立っていたり、それから私が手で持っていたり、それから実は今回、ロボットカメラがですね、360度カメラの中に白いロボットカメラの軌道が映るのは良くないんではないか、効果が、視覚効果に影響が出るんではないかということで、ロボットカメラのエンジニア自らが辞退致しまして、固定の、平沢を追いかけるだけのカメラになっています。で、そんなこんなでですね、カメラの台数は非常に多くて、まず360度カメラだけでも8台、それに、レール、クレーン、手持ち、その他、かなりの数あったと思います。えーと、そんなところでしょうか。
[35:29]
<音響問題>
そして音響問題ですね、これも質問に有ったんですが、「観客がいないと音響はどうなのか」ということなんですけれども、まず、普通、ライブがあると観客は、我々は音響的には「吸音材」と考えます。つまり観客が入った時に初めて良いバランスになるようにチューニングするわけですね。で、もし、観客が入らなければ、ものすごい低音が会場の中を駆け巡って「モアー」って言ってしまったりとかですね、高音が耳をつんざく勢いでやって来たりとかですね、それが前の壁に反射して後ろに反射して、横に反射したものが私にやってくる、みたいな、もうリズムが滅茶苦茶になっているという、そんな現象が起こるようにチューニングしておいて、お客が吸音材になって初めて良いバランスになるということを予測しながらチューニングしていくわけですね。
[36:35]
ところが、今回は観客が会場にはいなかったものですから、吸音材が無かった状態でした。それでも、いろいろ測定しながら、予測しながら、これについてはほとんど、やってみないと分からないという状態でしたので。そして、私のイヤーモニターと外から反射してくる音のバランス等いろいろ考えながらやったんですが、やはり、観客が吸音材としていないと非常に厳しい状況でした。毎度、私の乗っている山台が共鳴し始めて、まして、今度はですね、下にキャスターが付いているので、床から少々持ち上がった状態なんですね。ですから宙に浮いた状態ですので、低音でもう全体が揺すられると。全体が揺すられる上に乗っている私の骨格は揺すられ、それが鼓膜を揺すり、ひとつの欲しくない音響を私に伝えて来るわけです。さらに、奥の壁から反射して届く高音域が、イヤーモニターから聞こえる高音域とリズムがずれているんですね。そういう状況の中でやらなければならなかったので、やっぱり、途中音程が取れないという現象が何回かありまして、非常に厳しい状況でした。
[38:16]
それでですね、これ、ライブではそのままライブ配信したので、音程がずれているところとかですね、仕方ないということでして、360°配信までには、修正致します。修正致しますので、憶えておいて下さい。これは修正です。歌い直したりとかですね、機械で修正できるところは、修正します。ということを告白しておきます。
[28:49]
まあ、あの、いずれにしてもDVDになる時には必ず修正入りますんで、今回、360°配信までに、簡易的にでも修正しておきます。
[39:06]
「本日のプログラムの流れ:コンサートのエピソード→質問コーナー→休憩→驚きの公開」
ということで、私から皆様にお話しできるエピソードというか、そういうものは以上で、既に8時40分になったのですが、ここから質問コーナーに移りたいと思いますけれども、今日はですね、告知にも有りましたように、質問コーナーが終わった後、驚きの公開を致します。ので、おそらく1時間では終わりません。1時間半から、もしかしたら、これからQ&Aをやりますけれども、それの流れによっては2時間近く行ってしまうかもしれません。ということで、途中で休憩を入れましょうか。じゃあここで、キリがいいので、一旦休憩をしましょうかね。それでは5分位、休憩致します。また5分後にお会いしましょう。