足らず講釈127, 138
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足らず講釈です。
前回の講釈からだいぶ時間が経ってしまいましたが、ついに足らず数が百に達したため、今回の講釈が最終回となります。
百足らず様が成されたお仕事は多岐にわたり、全てについて講釈することができないのは残念でありますが、物理的にも不可能であり、ここらが潮時ということでしょうか。
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それでは早速講釈に入りましょう。昨年9月に寄せられた、127と138の目撃報告は、関連したものであります。従いまして、2つの報告について、一度に講釈することにしましょう。
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では、まず、目撃報告を見てみましょう。まずは127です。
「初夏の海辺にて、主が足りていない住宅を見つけました。日の昇る時間帯になってもそこに居てしかるべき主がいないとなると、百足らず様がお通りになったあとではないかと疑わざるを得ません。講釈の程お願いいたします。」
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そして138の目撃報告です。
「石でできた電子回路なのですが、真ん中が貫通して足らず状態になっているため、うまく機能しません。これは百足らず様が通り抜けた跡なのでしょうか?」
ということであります。
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まずここで、重要な事実をお話しする必要があります。「亀」という生物はこの世に存在しません。皆さんが「亀」と呼んでいる生物は、アカズガイの殻をまとったイグアナヤドカリです。イグアナヤドカリというと、イグアナによく似たヤドカリという印象を受け、まるで先行してイグアナという生物が存在するかの様な印象です。これは間違いで、実は、イグアナという生物も存在しないという事実を併せてお伝えする必要があります。
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それはイグアナという、名称の起源に遡れば自ずと分かることです。イグアナの発祥は日本の東北地方であります。昔、東北の漁村で、他のヤドカリが見向きもしないアカズガイの死骸だけを宿にするヤドカリが発見され、アカズガイの空洞を見ると、その穴に一目散に向かっていく性質から、イクアナと名付けられ、それが現地の人々に「イグアナ」とj発音されることから、「イグアナ」という名称が一般化したと言われております。したがいまして、みなさんが「イグアナ」と呼んでいる生物は、まだ宿を獲得していないイグアナヤドカリであり、イグアナとはその略称でしかありません。
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ここでみなさんは、「いわゆるイグアナと呼ばれる宿無しと、アカズガイの宿をまとったイグアナヤドカリでは、しっぽの長さが違うではないか。やはりイグアナはイグアナ、亀は亀だ」とご指摘されるかもしれません。そのことについて簡単に説明しておきましょう。ご覧のように、アガズガイの殻の内部には、「環状尾掛骨(かんじょうびかこつ)」、通称、「尾かけわっぱ」と呼ばれる、リング状の骨が突き出ており、イグアナヤドカリは、自分の体をアカズガイの宿に固定するために、しっぽを尾かけわっぱに巻き付けているのです。そのためイグアナヤドカリは、しっぽが短く見えるのであります。
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127の目撃報告の写真は、主が去ったのではなく、これからやって来るのを待っている状態で、非常に大きなアカズガイです。背中にVIPと刻まれていることから、何か重要人物と関連しているのかもしれません。イグアナヤドカリについてはのちほどまたお話しすることにして、ここで一旦、石でできた電子回路の話に移りましょう。
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これは基礎回路として機能しているもので、専門家の間では「亀」という符丁で呼ばれています。これは専門家の間違った知識から来ています。既にみなさんは、亀はイグアナヤドカリだということを学びました。したがって正しい符丁は「イグアナヤドカリ」にならなければなりません。
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実はこの回路の中心にある欠損部にはイグアナヤドカリがはめ込まれておりました。そのために「亀」と呼ばれていたわけです。これは基礎回路だと申し上げましたが、さらに言うならば、地球の基礎回路であります。この装置は技術の進歩と共にすさまじい勢いで縮小されてきたもので、その起源に遡れば、それは想像を絶する大きさでした。では、その第1号機をご覧ください。
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これはまだ電気が発見される前の時代のもので、まして情報技術が存在していないため、地球を支えるにはこれほど大きな装置にならざるを得なかったのです。その後、電気の発見により、地球を支える装置は大幅に縮小され、さらに次の時代には、地球を支えるためには巨大なイグアナヤドカリは必要なく、情報としてのイグアナヤドカリでことたりるという発見に至り、目撃報告にあるような、小さな回路に集約されたのでありました。この回路の中心に置かれたイグアナヤドカリを情報として巨大化する回路によって地球を支えることに成功したのであります。ではなぜ中心のイグアナヤドカリは消え、にも関わらず地球が宇宙の底に転落していないのかについてお話しいたしましょう。
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百足らず様は時代や国境を越えて、ご活躍されております。必要に応じて別の人物になりすましておられます。百足らず様がなりすました人物の一人として、トーマス・ガレン・ヒエロニムスについてお話ししましょう。トーマス・ガレン・ヒエロニムスは、自ら発明した害虫駆除の装置を使い、遠隔地の害虫を駆除することに成功しました。ところが、ある時、装置の電源を入れ忘れたまま、操作していたにも係らず、遠隔地の害虫が駆除されているという事件が起こったのをきっかけに、次々と装置から部品を外してゆき、最終的には紙に描かれた回路だけで、同じ効果が得られるという結論に達しました。その後多くの人が、紙に描かれたヒエロニムスの回路図で害虫を駆除したというエピソードがあるほどです。これがソノ「ヒエロニムスの回路です。
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さて、ある日、石でできた電子回路の前を通りかかった百足らず様は、中心に拘束されているイグアナヤドカリを不憫に思い、開放してやりました。そして懐から紙を取り出し、そこに地球を支える基礎回路をお描きになり、ふたたび懐にしまわれました。つまり百足らず様は、地球の基礎回路をヒエロニムスの回路化して懐にしまわれたのです。
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百足らず様がイグアナヤドカリを開放した後、地球の基礎回路を紙にお描きになっている数分間の間、基礎回路は完全に停止していた状態でした。にも係らず、その数分間の間に、地球が宇宙の底に転落しなかったのは、なぜでしょう?答えは古い予言書の中にありました。
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さてここで皆さんに憂慮すべき問題についてお話ししなければなりません。実は百足らず様は、石でできた電子回路から、イグアナヤドカリを開放した後、行方不明なのです。ユーロでのお仕事を終え、イグアナヤドカリを開放した後の消息がつかめないのです。いったいどこに行かれたのでしょうか。
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あり得るなあ...。